泌尿器

患者さんへのメッセージ

このページを読まれている皆さん、もしかしたらご本人やご家族が「がん」と診断され、今後の治療などについていろいろと悩まれているのかもしれません。「がん」という病気は不治の病の印象を持たせますが、今はそうではありません。何とか治れば御の字という時代から、いかに苦痛なく上手に治すかという時代に変わってきています。前立腺がん、腎がん、膀胱がん、腎盂(じんう)・尿管がん等々、泌尿器科が治療する「がん」はたくさんありますが、当科はいずれの「がん」の治療も得意であると自負しており、その中核を担うのが体に優しいロボット支援手術です。
さかのぼること10年前、日本にわずかしか手術支援ロボットが導入されていなかった当時から、泌尿器科が先陣を切ってロボット支援手術を開始しました。京都では2校の大学とほぼ同時、この技術に惚れ込んだ最速の導入でした。以後、常にその先頭を走り続けています。今でこそ当たり前になったロボット支援手術も、当たり前だからこそ“その実績”がものを言います。お悩みは我々が解決に導きますので、ぜひかかりつけの先生と相談の上、泌尿器科の門を叩いてください。治療から社会復帰までスムーズな流れをお約束します。

泌尿器科 清川 岳彦
泌尿器科 部長
清川 岳彦

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前立腺がん

前立腺は男性にしかない臓器で、尿の通り道である尿道を取り巻くように存在しています。そのため、前立腺がんは、進行すれば尿の勢いが衰えるなどの症状が出ますが、早期には全く無症状なのが一般的です。幸い、簡単な血液検査(PSA検査と言います)で早期発見が可能ですので、市民検診や人間ドックなどを活用してぜひともPSA検査を受けてください。

PSA検査の普及などに伴い、前立腺がんは増加の一途をたどってきました。現在、男性においては一番多いがんであると言われています。幸い、治療法の進歩により、早期発見された前立腺がんはほぼ完治可能で、がんの指標の一つである5年生存率(診断から5年間生存している割合)は100%に近いと言われています。一方、残念ながら最初から転移があるような進行がんであっても、ここ数年で飛躍的に治療薬が増えてきており、生活の質を落とさず長期に治療を継続することができるようになりました。

早期がんや、少し進行したがんに対する治療法は多彩で、ここにすべてを記しませんが、代表的な治療法は、手術療法と放射線療法と言われています。いずれの治療法も医学・工学の進歩に伴い、日々洗練されています。手術用ロボット「ダヴィンチ(da-Vinci)」(ロボット手術についての詳細はこちら)が最初に保険適応となったのが前立腺がん手術であったことからもわかるように、前立腺がん手術においてはロボット支援手術が最先端の標準療法となりました。

放射線療法においても照射範囲をコンピュータで細かく制御する強度変調放射線外照射療法(IMRT)(強度変調放射線外照射療法についてはこちら)が標準的になっています。当院ではロボット支援手術、強度変調外照射療法のいずれも提供することが可能です。

前立腺がんと診断され、治療法の決心がついた方、どの治療法にしようか悩まれている方、いずれの方もまずはかかりつけの先生にお声をおかけください。当院泌尿器科を紹介いただきましたら、治療をはじめ、その先のことをじっくりとご相談いただけます。

腎がん

早期発見される腎がんが増えています。それは、人間ドックや診療所で超音波検査やCT検査を受ける機会が増えたことが一因と言われています。かつては、がんが大きくなり、血尿や腰痛などの症状があらわれたり、腹部のしこりに気づいて、腎がんが見つかると言われていましたが、それより前の無症状の段階で見つかることが増えたのです。

では、どれぐらいの大きさまでが早期発見なのでしょうか?
 明確な答えはありませんが、一つの指標として、手術でがんのみを摘出するか、腎臓ごと摘出するかの境目が直径7㎝と言われています。およそテニスボール大までは早期発見と言っていいとなると、驚きとともに安心されたと思います。

早期発見された腎がんの標準治療は手術です。腎臓は、“体内の老廃物を取り除き、尿として排出する重要な臓器”ですので、がんの治療を行う場合でも、できる限り周囲の正常腎臓に悪影響を及ぼしたくありません。そのために進歩してきたのが、がんの部位のみを摘出する腎部分切除術です。しかしながら手術を行う医師の立場からすれば、腎部分切除術はとても難しい手術であり、そのことが普及の妨げになっていました。

しかし手術用ロボット「ダヴィンチ(da-Vinci)」(ロボット手術についての詳細はこちら)によってその妨げは解消され、さらに経験を積むことにより、当院では7㎝以下の腎がんなら技術的にほぼロボット支援の部分切除術が可能です。もちろん7㎝を超えても、腹腔鏡やダヴィンチを使用して腎臓全体を摘出し、完治させることが可能です。

一方、大きさにかかわらず、すでに転移している腎がんについては、薬物療法を中心にすえた治療を行います。その治療薬の選択肢も増えました。腎がんと診断されたなら、かかりつけの先生の紹介により当院で治療を受けていただくことができます。

膀胱(ぼうこう)がん

膀胱は、尿という老廃物の集まりに常にさらされており、発がんの刺激を受けやすい臓器の一つです。タバコの影響を受けやすいがんの代表でもあり、化学薬品にさらされることによって職業病のように発病することもあります。幸い、多くの場合、血尿という症状があらわれて異常を教えてくれます。その血尿は、痛みを伴わない場合が大半で、痛みのある血尿より痛みのない血尿のほうが心配な症状であるとお考えください。
血尿が出たため医療機関にかかると、超音波や尿細胞診(尿の中にがん細胞があるかを調べる検査)などで調べたうえで、最終的には膀胱内をファイバースコープで観察する膀胱カメラで診断をつけます。

ひとくちに「膀胱がん」と言っても、多様な疾患の総称です。再発をひんぱんに繰り返すもののめったに進行しない良性に近いものから、数ヵ月で進行して命を左右するものまでが混ざっています。

膀胱がんの診断がつけば内視鏡を使用して削りとる手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術:TURBTと言います)を行い、その膀胱がんの性質を確認し、追加の治療が必要かどうかを判断します。“経過観察でよい膀胱がん”から、“再発予防に膀胱内に薬物注入が必要な膀胱がん”、“膀胱を摘出する手術が必要な膀胱がん”まで、幅広い膀胱がんが存在します。

かつて、膀胱を摘出する手術(膀胱全摘除術)は、泌尿器科手術の中でも大変な手術の代表でした。それは膀胱を摘出したのちに、体外に尿を導く“尿路変更術”という再建手術を同時に行う必要があるからです。しかも、この手術が必要になる患者さんには高齢の方が多く、手術を断念せざるを得ないこともしばしばありました。

しかし、このような状況は、手術用ロボット「ダヴィンチ(da-Vinci)」(ロボット手術についての詳細はこちら)によりロボット支援膀胱全摘除術・尿路変更術が普及し、解消されました。ロボット支援手術によって、体への負担、手術時間、術後合併症(手術後に起こる好ましくない症状)などが大きく改善され、高齢の患者さんでも安心して受けていただいています。

残念ながら、病気が膀胱にとどまらずに転移が見られた場合は、薬物療法を中心にすえた治療を行います。医学の進歩によって治療の選択肢はここ数年で大幅に増えています。まずは診断が大切です。血尿が見られたなら躊躇(ちゅうちょ)せず、かかりつけの先生、地域の泌尿器科の先生のクリニックを受診してください。ご紹介を受けた当院は、その先の精密検査・治療を担当させていただきます。

腎盂(じんう)・尿管がん

腎盂・尿管は、“腎臓から膀胱までの尿の通り道の総称”です。そこにできたがんが腎盂・尿管がんであり、その性質は膀胱がんによく似ています。実は腎盂・尿管と膀胱は、細胞レベルでは尿路上皮(にょうろじょうひ)という同じ細胞からできており、その細胞が変化してできたがんが“できる場所”によって「腎盂がん」「尿管がん」「膀胱がん」と名称を変えるのです。中でも腎盂がんと尿管がんについては診断や治療が共通ですので、「腎盂・尿管がん」とまとめて呼ばれます。腎盂・尿管がんで多い症状も、膀胱がんと同じ“痛みのない血尿”、それに加えて、腎臓から膀胱への尿の流れの停滞による腰痛などが伴うことがあります。

転移のない腎盂・尿管がんの治療の根幹は、手術療法です。膀胱がんの場合とは違い、“内視鏡を使用して削りとる手術”は限られた条件が整った時のみ可能で、大半は、腎臓(その中に腎盂が存在)と尿管をすべて“ひとかたまり”として摘出する腎尿管全摘除術が必要となります。病変の大きさに比べて大がかりな摘出が必要となりますが、この手術も2022年より手術用ロボット「ダヴィンチ(da-Vinci)」(ロボット手術についての詳細はこちら)を用いることが可能となりました。がんの病態によっては、体への負担が少ない腹腔鏡手術をロボット支援手術に置き換えることにより、一段と負担の軽減が期待できます。残念ながら、病気が腎盂・尿管にとどまらずに転移が見られた場合は、薬物療法を中心にすえた治療を行います。

膀胱がん同様、医学の進歩でその選択肢はこの数年間で格段に増えています。まずは診断が大切です。血尿・腰痛の症状が見られたなら、ためらうことなく、かかりつけの先生、地域の泌尿器科の先生に診てもらってください。ご紹介を受けた当院は、その先の精密検査・治療を担当させていただきます。

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京都市立病院

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