血液・リンパ

患者さんへのメッセージ

「血液のがん」と聞くと、「難しい」、「治療が大変」、「不治の病」というイメージが強いと思います。実際、血液がんの代表である白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などは、主に抗がん剤による化学療法や造血幹細胞移植(骨髄移植や臍帯血移植など)といった専門的な治療を行います。治療には副作用がつきものですが、治療方法や副作用対策は大きく進歩し、仕事や家事などの日常生活を送りながら外来で通院治療ができる疾患が増えてきました。また、治療成績も年々向上しています。その一方で、いまだ治癒(ちゆ:病気などが治ること)が難しく再発しやすい疾患が存在するのもまた事実です。「血液がん」に対応できる医療機関はどうしても限られてしまいますが、当科では医師や看護師をはじめ、専門的治療に対応できるスタッフや設備を揃えています。
これらの疾患の多くは長期間の治療や経過観察を必要とします。治療を受けるにあたりいろいろな疑問や不安も生じると思いますが、私たちが最大限のサポートを提供しますので、どうぞお気軽にスタッフにご相談ください。

血液内科伊藤満
血液内科 部長
伊藤 満

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悪性リンパ腫

私たちの血液細胞のうち、「リンパ球」と呼ばれる細胞(白血球の一種)は、骨髄(こつずい)という骨の内部にある組織でつくられ、リンパ節、脾臓(ひぞう)、扁桃(へんとう)、胸腺、血液中をはじめ、全身に広く分布しています。  なお、リンパ節とは、からだ全体にある免疫器官の一つで、からだに害になるものを取り除く器官です。扁桃は、喉にあるリンパ組織(リンパ球がつくられて増えている場所と、免疫反応する場所)です。

「悪性リンパ腫」とは、このリンパ球ががん化した悪性腫瘍で、多くの症例(症状の例)では複数のリンパ節が腫れます。一般的な症状としては、首、脇の下、足の付け根などのリンパ節が腫れたり(多くの場合、痛みを伴わない)、時に発熱、体重減少、寝汗、倦怠感といった症状を伴ったりします。リンパ節以外の組織に腫瘤(しゅりゅう:いわゆる“かたまり”)を形成することもあります。多くは原因不明ですが、ある種のウイルス感染が発症の原因となることもあります

悪性リンパ腫には非常に多くの種類があります年単位で極めてゆっくり進行し、治療開始を全くあわてないタイプから、日単位で急速に進行し、速やかな診断と治療開始を必要とするタイプまでさまざまです。大きく分けて、「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」があり、日本人の9割は後者です。非ホジキンリンパ腫の中でも、「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」が最多で、「濾胞性(ろほうせい)リンパ腫」がそれに続きます。

治療方法は化学療法(抗がん剤治療)がメインとなりますが、一部の症例では放射線療法や造血幹細胞移植(自家末梢血幹細胞移植、同種造血幹細胞移植)も行うことができます。使用する抗がん剤も病型(病気のタイプ)によって大きく異なるため、最初の診断に至る過程(組織の一部を切り取り検査する「生検」が不可欠)が極めて重要です。病期(病気の広がり)によっても治療方法や治療期間が大きく変わるため、各種画像検査(CT、MRI、PET-CTなど)や骨髄検査も重要になります。

化学療法では、“抗がん剤を投与する期間と、投与しない休養期間”をワンセットとし、これを「コース」(サイクル、クールとも)と呼んでいます。最初に2〜3週間の入院で初回治療を行い、休養期間を経て、次の2コース目の治療に入ります。2コース目からは、通院での化学療法、もしくは短期入院の反復(繰り返し)で行うことがほとんどです。放射線療法や造血幹細胞移植は、病型や病期、治療効果によって組み合わせます。

悪性リンパ腫は日本の成人の血液腫瘍の中で最多であり、罹患率は人口10万人当たり年間30人前後、死亡率は10人前後とされています。当科でも多くの患者さんが治療を受けられています。

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多発性骨髄腫

私たちの血液細胞のうち、「リンパ球」と呼ばれる細胞(白血球の一種)は、骨髄(こつずい:骨の内部にある組織)でつくられます。リンパ球の一種である「B細胞」は免疫細胞の一つで、体内への異物侵入などの刺激により「形質細胞」に変化します。この形質細胞は、「抗体」(異物を攻撃する蛋白質)をつくり、私たちの身体を守ります

「多発性骨髄腫」とは、この形質細胞ががん化した悪性腫瘍です。がん化した形質細胞(骨髄腫細胞)は骨髄中で異常増殖し、役立たずの抗体(M蛋白)を大量につくり、それにより極めて多彩な症状を起こします。
代表的な症状としては、(1)骨がもろくなる(骨痛や病的骨折)、(2)血液中のカルシウムが高値になる(口の渇き、意識障害、不整脈)、(3)腎臓の機能が悪くなる(尿量減少、むくみ、尿毒症)、(4)正常な造血ができなくなる(特に貧血症状や出血症状)などが挙げられます。
高齢者に多い病気であり、比較的ゆっくり進行しますが、完治させるのは非常に難しくなっています。診断するために、血液検査、尿検査、骨髄検査、各種画像検査などを行います。

治療方法については、化学療法(抗がん剤治療)がメインですが、70歳以下で全身状態の良好な方では造血幹細胞移植(自家末梢血幹細胞移植)も行うことができます。また、骨の症状を抑えるための治療(放射線療法、手術、鎮痛剤、骨病変の進行を抑える薬物療法など)などを併用することもあります。
多発性骨髄腫の化学療法は近年急速に進歩しており、毎年のように新しい抗がん剤が登場しています。それにより、治療の選択肢が増え、完治はいまだ難しいながらも、治療成績は年々改善しています。

化学療法については、最初2週間前後の入院で初回治療を行い、その後は通院での化学療法が中心となります。造血幹細胞移植は入院して実施します。

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白血病

私たちの血液細胞は、骨の中にある「骨髄(こつずい)」と呼ばれる組織でつくられます。骨髄の中にある「造血幹細胞」(すべての血液細胞のもととなる細胞)が増殖および成長(「分化」といいます)し、赤血球(全身に酸素を運ぶ)、白血球(体内に侵入する細菌やウイルスを殺す)、血小板(血液を固めて出血を止める)といった、それぞれの役割をになった(いわば大人の)細胞になります。骨髄や血液の中にある血液細胞の数は、一定の範囲内に入るよう細かく調整されています。

「白血病」とは、血液細胞の悪性腫瘍(がん)であり、骨髄内で成長の途上にある未熟な血液細胞が「がん(=白血病細胞)」になり、分化が障害され、上記の一定の範囲内を無視して自分勝手に無制限に増殖し、その結果、骨髄内は白血病細胞で満たされ、正常な血液細胞をつくることができなくなる病気のことです。多くは原因不明ですが、ある種のウイルス感染、過去の抗がん剤投与や放射線被曝が原因で発症することもあります。

白血病は大きく分けて、急速に進行する「急性白血病」と、ゆっくり進行する「慢性白血病」に分けられます。また別の分類では、がん化する細胞の種類の違いにより、「骨髄性白血病」と「リンパ性白血病」に分けられます。これらを組み合わせて、大きくは「急性骨髄性白血病」、「急性リンパ性白血病」、「慢性骨髄性白血病」、「慢性リンパ性白血病」の4つに分類されます。急性白血病はさらに細かく分類されますし、白血病に類縁疾患(近い関係の病気)として、「骨髄異形成症候群」や「骨髄増殖性疾患」もあります。確定診断のためには、骨髄検査や血液検査などが必須です。

急性白血病の治療は、基本的には化学療法(抗がん剤治療)、そして適応(必要条件を満たしていること)があれば、造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植)を行いますが、病型(病気のタイプ)により使用する抗がん剤の種類や投与スケジュール、移植の適応や方法が変わってきます。それらは入院治療を中心とした“非常に専門性の高い治療法”であるため、それに対応できる設備とスタッフを揃えた専門施設での治療が必要です。

慢性骨髄性白血病は、内服の特効薬(チロシンキナーゼ阻害剤)の登場により、かつて言われた「不治の病」から、10年生存率90%を期待できるまで治療成績が大きく改善しました。治療開始時に短期入院し、その後は通院となります。ただし、副作用の管理や効果判定(治療の総合効果の決定すること)など、この治療に精通した医師の診察が必要になります。

慢性リンパ性白血病は欧米人に多い病気ですが、我が国ではかなり少ない病気です。

当科ではこれら白血病やその類縁疾患の診断および治療(化学療法、造血幹細胞移植)に対応しており、近隣の医療機関から多数のご紹介を受けています。

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京都市立病院

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