乳腺

患者さんへのメッセージ

当科では総合病院の利点を最大限に活かし、乳腺外科医、放射線診断医、放射線治療医、病理医、緩和ケア医、放射線技師、臨床検査技師、看護師、乳がん看護認定看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカー(MSW)による多職種チームが患者さんの情報を共有し、スタッフ全員で最良・最適な医療で患者さんを支えていきます。
また京都市立病院乳がん患者会『ビスケットの会』では定例会の開催や、会報の発行・郵送などを行っています。乳がんの診断治療から遺伝診療、がんゲノム医療、放射線治療、緩和医療、地域医療との連携及び患者会活動までフルスペックで患者さんのお力になれるようスタッフ全員で努めています。

乳腺外科 森口喜生
乳腺外科 部長
森口 喜生

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乳がん

乳がんとはご存知のように、乳がんは女性のかかる「がん」の中で最も多く、女性の「がん」の23%を占めると言われています。そして女性の9人に1人が生涯のうちに乳がんになると言われています。しかし、乳がんになっても根治する方も多く、早期の発見、適切な治療を行えば治療成績は良好です。定期的な乳がん検診や、症状がある場合の早期の乳腺外科の受診が大切です。当院での乳がんの診療についてご紹介いたします。

参考資料

乳がん罹患数、死亡数

診断される数(2018年) 94,519例(女性93,858例、男性661例)
死亡数(2020年) 14,779人(女性14,650人、男性129人)
5年相対生存率(2009~2011年) 92.3 %(女性のみ)

元データ 全国がん登録罹患データ(罹患)人口動態統計死亡データ(死亡)地域がん登録生存率データ(生存率)

国立研究開発法人国立がん研究センター
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/14_breast.ht

2013-2014年診断 5年生存率

乳がん(癌)(女性)での数値

病期 対象数 集計対象
施設数
生存状況把握
割合
平均年齢 実測生存率 相対生存率
全体 76,596 435 98.3% 60.1歳 87.7% 92.2%
Ⅰ期 34,450 428 98.3% 60.0歳 95.2% 99.8%
Ⅱ期 27,945 431 98.2% 59.8歳 90.7% 95.5%
Ⅲ期 9,359 427 98.4% 60.5歳 76.2% 80.7%
Ⅳ期 4,469 414 98.5% 60.2歳 37.0% 38.7%

国立研究開発法人国立がん研究センター
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/14_breast.ht

●自覚症状や検診異常が受診の契機となります。

自覚症状としては、乳房のしこり、乳頭からの分泌物、乳房の皮膚のひきつれ、腋(わき)のしこりなどがあります。また乳がん検診や、たまたま受けたCT検査等で乳房の異常が発見されることもあります。検診、ドックなどで乳房の異常を指摘され、精密検査が必要と言われた方や、自覚症状(しこりや分泌物など)のある方は、紹介状が無くても予約センター(075-311-6361)にお電話をいただければ、初診の診察の予約を入れることができますので、どうぞご利用ください。なお、乳がんの検診には自治体の検診、職場の検診、個人の任意の検診などがあります。当院では市民検診、人間ドック、乳がんドックで検診が受けられますのでどうぞご利用ください。

●検査・診断について

乳房の検査では超音波検査、マンモグラフィ(※)をまず行います。詳しい検査が必要な場合には乳房MRIの画像検査を行います。画像検査で乳がんの可能性があれば、マンモトーム生検や針生検で病変の一部を採取して病理検査を行い、確定診断を行います。乳がんの場合には確定診断のみならず、腫瘍の性質(ホルモンレセプターやHER2蛋白、 Ki67の免疫染色を調べ、腫瘍のタイプも確認します)も確定し、治療方針を決定します。

またマンモグラフィーで悪性が疑われる乳房の石灰化(カルシウムの沈着)病変があるにもかかわらず触診や触超音波検査で腫瘤がはっきりしない症例では、石灰化病変に対して「ステレオガイド下マンモトーム生検」(マンモグラフィで石灰化の位置を確認しながら組織を採取する検査)を行い、確実な診断を行います。当院は遺伝性乳癌卵巣癌総合診療暫定基幹施設であり、遺伝診療部と連携して遺伝性乳がん卵巣がん症候群の診療も行っており、予防的乳房切除術、予防的卵管卵巣切除術にも対応しています。
(※)当院では3Dマンモグラフィ/トモシンセシスを導入しています。トモシンセシスでは1回の撮影で連続的にX線を照射し、奥行き方向(3次元的)に細かくスライスした断層画像が複数枚得られます。任意の断層面が表示できるため乳腺に埋もれた病変の発見に役立つといわれています。

●乳がんの初期治療

乳がんの初期治療は、乳がんと診断された方に治癒を目指して行う治療です。乳がんの治療は手術、薬物療法、放射線治療など多岐にわたり、患者さんごとに最適な治療を選択することが重要です。

手術においては、病変の広がりに応じて乳房部分手術や乳房切除術を行います。また術前の検査で腋のリンパ節転移を認めない方にはセンチネルリンパ節(腋の下のリンパ節の中でも乳腺のがん細胞がが最初にたどりつくリンパ節)生検を行い、術中の検査で転移がなければ、腋のリンパ節郭清の省略を行います。乳房切除術や広範囲な部分切除の必要な方に対しては形成外科と連携し自家組織や人工物(エキスパンダー、インプラント)による乳房の再建手術を積極的に行っています。全身麻酔の手術の場合でも症例に応じて短期の入院手術が可能です(最短1泊2日の入院)。

初期治療の薬物療法は再発防止を目的に行います。主に化学療法(抗がん剤治療)、ホルモン療法、分子標的治療などがあります。慎重な判断のもと適応症例には化学療法を行います。また通常よりも短期間で行うdose-dense化学療法も積極的に行っています。化学療法による脱毛予防のための頭皮冷却療法も行っています。ホルモン感受性のある腫瘍(ホルモンの影響によって増殖が促される性質をもつ腫瘍)の場合は、再発リスク等を予測する検査「多遺伝性アッセイ(オンコタイプDXなど)」を行い、可能な限り化学療法の回避に努めています。

化学療法は外来化学療法センターで安全・確実な管理のもと行います。術後のホルモン療法は5年から10年と長期間にわたります。顔のほてり、関節痛、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)など種々の副作用があらわれることがありますが、個々の患者さんの症状に合わせて対応し、治療の完遂に努めています。また適応症例には分子標的治療、放射線治療を行います。

●転移・再発治療

初診時に遠隔臓器(がん細胞が発生した場所から離れた場所)に転移がある場合や、十分な初期治療を行ったにもかかわらず、術後に転移・再発した場合には、症状の軽減や生存期間の延長を目的に種々の治療を行います。ホルモン療法、分子標的治療、化学療法、放射線治療、がんゲノム医療など、個々の患者さんに応じた最適な治療を行います。

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京都市立病院

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