災害医療・DMAT
災害医療体制の取り組み
京都府内で、大規模な地震・水害などの自然災害や大規模事故等が発生し、多数の傷病者が発生した際の対策として、「京都府地域防災計画」や「京都府保健医療計画」に基づき、災害時の医療体制確保の取り組みを進めています。
災害拠点病院について
日本政府は、平成7年に発生した阪神・淡路大震災の教訓を生かし、災害時における初期救急医療体制の充実強化等の新たな災害医療体制を実現するため、平成8年、各都道府県知事に対し、健康政策局長通知を発出し、災害拠点病院の整備を図りました。
災害拠点病院は、大規模災害発生時に多数の傷病者を受け入れるとともに、一般の病院等の後方医療機関として地域の医療機関を支援する機能を有する病院で、災害時の医療救護活動において中心的な役割を担う病院として位置付けられており、その中で当院は「京都・乙訓医療圏」の災害拠点病院に指定されています。
- <災害拠点病院の機能>
- 救命医療を行うための高度診療機能
- 被災地からの重症傷病者の受入機能
- 傷病者の広域後方搬送への対応機能
- DMATや医療救護班の派遣機能
- 地域医療機関への応急用医療資機材の貸出機能
DMATとは
「災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム」と定義されており※、 災害派遣医療チーム Disaster Medical Assistance Team の頭文字をとって略して「DMAT(ディーマット)」と呼ばれています。 ※平成13年度厚生科学特別研究「日本における災害時派遣医療チーム(DMAT)の標準化に関する研究」報告書より
医師、看護師、業務調整員(医師・看護師以外の医療職及び事務職員)で構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48時間以内)から活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チームです。
1995年1月17日、戦中・戦後を通じて最大の自然災害である、「阪神・淡路大震災」が起こりました。 <被害概要> 1995年1月17日 午前5時46分 マグニチュード7.2 全壊家屋:104,906棟 被災家屋:512,882棟 死者・行方不明者6,425名 負傷者43,772名
この阪神・淡路大震災について、初期医療体制の遅れが考えられ、平時の救急医療レベルの医療が提供されていれば、救命できたと考えられる「避けられた災害死」が500名存在した可能性があったと後に報告されています。
この阪神・淡路大震災で災害医療について多くの課題が浮き彫りとなり、この教訓を生かし、各行政機関、消防、警察、自衛隊と連携しながら救助活動と並行し、医師が災害現場で医療を行う必要性が認識されるようになりました。
“一人でも多くの命を助けよう”
※平成13年度厚生科学特別研究報告書「日本における災害時派遣医療チーム(DMAT)の標準化に関する研究」報告書より
と厚生労働省により、災害派遣医療チーム、日本DMATが平成17年4月に発足しました。
当院のDMAT
専門的な訓練を受けた医師、看護師、業務調整員で構成され、20名程度の隊員がおり、全国各地の災害発生時に被災地支援を行っています。また、DMATの技能維持講習や広域医療活動訓練への参加を含め、来るべき大災害や新興感染症に備えて最新の知識と技術の習得に努めています。
災害医療・DMATの活動実績
令和6年1月 能登半島地震に際し、DMATを派遣
令和6年1月1日に発生した能登半島地震に対し、1月4日から7日までの4日間、石川県内の被災地に派遣されました。
派遣メンバーは医師1名、看護師2名、業務調整員3名の計6名。4日に石川県立中央病院に参集後、5日から7日まで金沢大学附属病院で病院支援指揮所を運営しました。指揮所では救急車、ドクターヘリ、防災ヘリによる患者受入調整、経過記録表の作成、傷病者リストの作成などを行いました。
特徴的だったのは、道路が破損した影響で珠洲市や輪島市への交通アクセスが非常に悪かったうえ、悪天候の影響で患者搬送に想定よりも時間を要してしまったことです。
令和2年2月 新型コロナウイルス対応(ダイヤモンド・プリンセス号)に際し、DMATを派遣
令和2年2月19日から22日までの4日間、神奈川県内のクルーズ船で発生した新型コロナウイルス感染症対応のために派遣されました。
派遣メンバーは医師1名、看護師2名、業務調整員2名の計5名。主な業務は、乗客の健康管理と患者搬送のコーディネートなどを行いました。チームは現地の混乱を把握し、感染対策を徹底して業務にあたりました。当時は未知のウイルスで社会的にも不安が広がる中での派遣でしたが、船内スタッフと連携して無事帰院できました。
平成28年4月 熊本地震に際し、DMATを派遣
平成28年4月16日に発生した熊本地震に対し、4月16日から4月19日までの4日間にかけて、熊本県内の被災地に派遣されました。
派遣メンバーは医師1名、看護師2名、業務調整員2名の計5名。4月16日に熊本赤十字病院に参集。4月17日~18日には、くまもと森都総合病院での病院支援にあたりました。派遣中は交通網の混乱など困難な状況下での活動となりましたが、無事帰院できました。大規模震災下でのDMATとしての任務を全うできた貴重な経験となりました。
平成27年1月 救急・災害医療支援センター新築工事が完了
大規模災害時における災害医療派遣チーム(DMAT)の長期支援活動に対応するため、隊員用待機場所及びDMAT用備蓄倉庫として、平成27年3月に整備しました。
災害医療・救急医療の人材を育成する研修施設としての機能も備えています。平成27年12月には、電気自動車を利用した非常用電源供給システムを構築しました。
平成25年10月 ヘリポートの運用を開始
災害拠点病院としての役割を果たすため、北館の屋上にヘリポートを整備し、平成25年10月から運用しています。
災害時には、ヘリポートを活用して、被災地の災害拠点病院と被災地外の災害拠点病院とのヘリコプターによる傷病者の搬送を行います。
平成23年3月 東日本大震災に際し、DMATを派遣
平成23年3月11日に発生した東日本大震災に対し、3月12日から13日にかけて岩手県内の被災地に派遣されました。現地までは陸路で進入困難であり、伊丹空港から花巻空港まで自衛隊機で現地入りしました。
派遣メンバーは医師1名、看護師1名、業務調整員1名の計3名。チームは花巻空港のSCU(広域搬送拠点臨時医療施設)で治療チームとして活動し、主にヘリで搬送される被災者の治療に当たりました。チームは低体温症の患者や開放骨折の患者などを受け入れ治療し、重症患者の広域搬送にも携わりました。公共交通機関も止まっていたため、京都府がチャーターしたバスで新潟から北陸道経由で、14から15日の2日間かけて無事帰院できました。
参加している主な訓練
近畿地方DMATブロック訓練
近畿2府4県の持ち回りで開催される大規模な合同訓練です。被災した病院の傷病者受入や物資不足情報の整理、多数傷病者の受入・搬出を病院内外のDMATと連携して実施しています。
京都府総合防災訓練
京都府内の自治体で開催される訓練です。地震や豪雨などの災害を想定し、自衛隊・警察・消防と連携して実施しています。夏場の開催であるため、体調管理が重要です。
京都市総合防災訓練
京都市内で発生した大地震を想定した医療支援活動の訓練です。多数の負傷者が発生するリアルな状況で、トリアージや搬送優先順位の決定を実施しています。
JR列車事故訓練
JR西日本の主催する鉄道事故を想定した訓練です。自動車の踏切侵入による電車の脱線事故で多数の負傷者が発生することを想定しています。線路付近での活動のため、傷病者とDMATの安全確保がポイントです。
大規模災害対応訓練
当院主催の地震を想定した訓練です。100名以上の職員が参加する最も大規模な院内訓練で、近隣大学生が傷病者を演じるなどリアルな状況で実施しています。傷病者対応に加え、事業継続のための業務優先順位もシミュレーションしています。