静脈血栓症対策チーム(VST)
足を動かさずにいる時間が長いと、ふくらはぎの筋肉の深いところの静脈にできてしまう「血栓」(=深部静脈血栓 DVT)。それが血流に乗って飛んで行き、肺の動脈に詰まって生命をも奪いかねない病態(=肺塞栓症 PE)に進展することがあります。これら静脈血栓塞栓症(=VTE)は、「エコノミークラス症候群」として飛行機での移動や車中泊で話題になりますが、医療の中でも入院中の患者さんが急変する恐ろしい合併症として広く認識されています。
VTEは予防することが一番です
過去にVTEにかかったことがあったり、血縁の方にVTEにかかった人がいる場合には注意が必要です。それでなくても、高齢、肥満、妊娠、喫煙、脱水、感染、長期臥床、下肢麻痺、悪性疾患の存在など、さまざまなリスク因子が関与して血栓ができやすくなります。足の安静が必要な手術や治療、血管に刺激のあるお薬の投与でも起こりますし、入院そのものがVTE発生のリスクともいわれています。ひとたびDVTが生じると命取りになるPEの危険が迫りますので、リスクに応じて予防をすることが一番大切です。予防法の第一は、寝ていてもできる足首の運動と、安静が緩和されたらできるだけ「離床」することです。着圧の靴下(弾性ストッキング)や足裏・ふくらはぎを空気圧で圧迫する器械を用いることもあります。さらに、血が固まらないようにサラサラにしておく薬(抗凝固薬)を用いてしっかり予防することもあります。
それでもVTEは見つかっています
いろいろな予防策を講じても、なかなか完全にはVTEの発生を防ぐことはできません。グラフは、集計しはじめた2010年から昨年(2018年)までのVTEの発生状況です。最近では年間200人以上の患者さんが新たにVTEと診断されていて、そのうちの約6割が入院患者さんです。病気に対する認識が高まったことで検査が増え、小さいDVTが見つかりやすくなったということはありますが、全国的にもVTEが増えてきていることは事実のようです。
私たち多職種チームで見守り支援しています
VTEが見つかったときのポイントは、いかに適切な処置(治療)を迅速に行うかです。私たち、静脈血栓症対策チーム(VST=VTE stewardship team)は、京都市立病院に入院する患者さんから、重篤なVTEを合併して亡くなる方をひとりも出さないという目標を掲げ、主治医の診療を支援し患者さんの状況を見守ります。さらに、退院後ちょっと運動しても足が痛くなる・むくむといった後遺症(血栓後症候群)に苦しむ患者さんを少しでも減らすためにも、DVTの消失を目指した早期からの積極的な治療を提案しています。