第53回全国自治体病院学会にて当院職員の演題が最優秀賞を受賞しました。
平成26年10月30日・31日に宮崎県で開催された第53回全国自治体病院学会にて,当院の感染症科部長清水恒広と
看護部川田明浩の演題が最優秀賞を受賞しました。
清水恒広の提出演題は「多職種連携による感染症診療支援病棟ラウンドの7年」で,以下が概要となります。
こちらが参考資料になります。
【概要】
1.緒言
感染症科が担う業務は,2003年頃まで院内感染対策と症例数は多くない輸入感染症診療が主体であり,感染症科所属
医師は小児科医と消化器内科医の2名で,各固有診療科での診療が主要業務であった。2004年度から新しい研修制度が
開始されたのに伴い,院内他科の感染症入院患者の診療支援を行うため,2005年12月から,医師,薬剤師,細菌検査
技師の3職種による病棟ラウンドを開始した。血液培養陽性患者,感染症科コンサルト患者などを中心に,感染症の診断,
治療について他科医師を支援し抗菌薬の適正使用をめざした.多職種連携による感染症診療支援病棟ラウンドの7年間の
成果と影響につき振り返る。
2.活動内容
1)活動にあたり抗菌薬を整理し品目を削減,一部広域ないし特定抗菌薬を指定抗菌薬とし届出制とした。
2)ラウンド対象患者は血液培養陽性患者,感染症科コンサルト患者,指定抗菌薬使用患者などとした。
3)週2回,1回数時間をかけて対象患者の回診を行った。
4)医師は診断,治療,感染対策などにつき提案しカルテ記載した。
5)薬剤師は特定抗菌薬のTDMを実施した。
6)検査技師は血液培養分離菌や薬剤耐性菌情報などを迅速に担当医へ連絡し,半年に1度Antibiogramを作成した。
3.結果
1)年間血液培養検査本数は2006年約6000本から2012年約13000本に倍増し,小児も含めた血液培養2セット以上
提出率は80%以上を維持する。
2)バンコマイシン(VCM)血中濃度は24時間測定可能となり,薬剤師はVCM投与全例で積極的にTDMに関わっている。
3)検査技師は検体の検鏡結果や無菌検体培養陽性例,耐性菌検出例などの結果を,担当医ならびに感染症科医師に迅速
に報告する体制を構築した。
4)カルバペネム系薬,抗MRSA薬などの指定抗菌薬の使用量が減少し適正使用が進むと共に,80%台であったカルバ
ペネムの緑膿菌感受性率が95%以上を維持するようになった。
5)2010年に感染症専門医が誕生し,感染症科固有の専攻医,常勤医の増加とともに,年間入院患者数が2012年は250
人以上と前年の約2倍に増加した。スタッフ数も4から5人を維持している。
4.考察
感染症科のある施設は少ないが,多職種連携による感染症診療支援ラウンドを充実発展させることで,施設内の
感染症診療全体を担う真の感染症科を確立することは可能である。 |
川田明浩の提出演題は「昼夜逆転している患者のサーカディアンリズム改善への試み」で,以下が概要となります。
こちらが参考資料になります。
【概要】
1.目的
人間にはサーカディアンリズムがあるが,加齢による生理的変化や認知症による認知機能障害,身体活動の低下により,
睡眠・覚醒リズムが変調をきたしやすくなる。その状態で身体疾患のため入院すると,自宅等の慣れた環境からの変化に
対応できず,疾患の影響もあり昼夜逆転や夜間せん妄を起こしやすくなる。高齢者では睡眠薬の服用は転倒の危険性を
増加させ,睡眠薬による筋緊張の低下やふらつきは転倒危険因子となる。そのため,薬剤を服用するのではなくサーカディ
アンリズムを整えることで昼夜逆転を改善可能かどうか明らかにし報告する。
2.方法
2012年10月から12月の3ヶ月間.昼夜逆転している患者(深夜帯1時間以上覚醒または3回以上の中途覚醒がある。
かつ,日中30分以上入眠している患者)を対象に7名に,病棟スタッフに統一したケア計画を実施してもらう。ケア内容
と患者の状態を生活リズム観察表に記入し,それをもとに分析する。
3.結果
夜間覚醒回数は7人中4人が減少した。夜間の睡眠持続時間は7人中5人が延長した。睡眠合計時間は7人中5人が延長
した。日中傾眠時間は7人中2人が短縮した。排泄と睡眠の関係については,昼夜逆転の改善とともに夜間の排泄回数が
減少している。抑制具の使用頻度について関しては,減少することはできなかった。鎮静作用のある薬剤の使用状況は,
B氏は薬剤が増量となり日中傾眠時間が延長した。G氏は転出,転入といった環境の変化で夜間の覚醒時間が延長し薬剤
の使用を開始した。結果として,薬剤の使用は7人中1人が減少し,7人中5人は減少しなかった。
4.結論
サーカディアンリズムを整えることで昼夜逆転を改善することはできた。しかし,本院は急性期病院のため記入が短期間で
あった。薬剤の使用の減少に至らなかったのは,薬剤を減量・中断することで生活リズムが再び乱れるのではないかと危惧
する看護師の思いもあったと考える。
今後,生活リズムを把握し,必要なケア介入を行い,医師や薬剤師など多職種と情報を共有する必要があると考える。その
ことが,薬剤を患者の状態に応じた内容に変更することに繋がり,ひいては薬剤の使用を減少させることに好影響を及ぼすと
考える。 |