胆道拡張症
胆道拡張症について
肝臓では胆汁という消化液が作られます。胆汁は胆管へと分泌されます。胆管は徐々に合流していき最終的に1本の管になって十二指腸へと分泌されます。この胆汁が通る通路は胆道とも呼ばれ、胆道拡張症はこの胆道(つまり胆管)が拡張する病気です。
胆管が拡張する原因は以下のように考えられています。胆管は膵管という膵臓で作られた消化液の膵液を運ぶ管と合流して十二指腸へと注ぎます。通常、胆管と膵管は十二指腸の壁の中で合流し、括約筋で締められることでお互いに逆流しない様になっています。胆道拡張症では、この二つの管が十二指腸の壁の手前で合流しています。そのため、十二指腸の括約筋が閉じている時でも2つの管は交通しています。この交通を通って膵液が胆管へと逆流し、胆管や胆嚢が傷つけるために、胆管が拡張すると考えられています。
胆道拡張症の症状
多くのお子さんはお腹の痛みを訴えて受診されます。「お腹の痛み」というよくある症状のため、胃腸炎と診断され、なかなか診断がつかないこともあります。血液検査を行うとアミラーゼという膵炎の数値が上昇しています。また、超音波検査やCT検査を行うと拡張した胆管が見え、胆道拡張症と診断されます。症状がない時には血液検査をしても基本的にアミラーゼは正常値です。別の症状や病気の精査で行われた超音波やCT検査で偶然に発見されることもありますが、非常にまれです。
なぜ治療が必要なのか
膵液と胆汁とが混ざることによってタンパクの塊(タンパク栓)が形成され、これが詰まると膵炎を起こします。また、胆管が繰り返し傷つけられる事が原因でがん(胆管癌や胆嚢癌)が発症する危険性があります。
このため、胆道拡張症と診断された時には手術が必要になります。
手術方法
手術では拡張した胆管と胆嚢を切除します。そのままでは胆汁が腸に流れませんので、小腸を使って別のルートを作ります。
近年は子どもの負担を少なくするために腹腔鏡手術が広まってきており、当院でも腹腔鏡手術が可能です。傷の目安は図のようになります。
入院の経過
手術の前日に入院していただき、2日目に手術を行います。術後は腸の動きが回復すれば食事を再開し(だいたい手術から3日目前後)、経過が順調であれば手術から1週間程度で退院可能となります。この病気は手術の後も外来での長期的なフォローアップが必要になります。