停留精巣・遊走精巣

停留精巣・遊走精巣について

 お母さんのお腹の中にいる時、精巣はまず胎児の背中あたりで発生し、陰嚢まで降りてきます。陰嚢まで十分に降りきらず、腹腔内や足の付け根で止まってしまった病気を停留精巣といいます。

 これと似た病気に遊走精巣というものがあります。精巣に繋がる精管と血管は精巣挙筋という筋肉で包まれていて、寒い時や緊張した時に収縮して「縮み上がる」ようになっています。この病気では精巣は陰嚢まで十分に降りているのですが、「縮み上がる」反応が強いために足の付け根から陰嚢まで上ったり降りたりを繰り返してしまう病気です。

 外来を受診していただく時には多くのお子さんが緊張しており、精巣が上っていることが多いです。そのため、外来での診察では停留精巣と遊走精巣とを区別することが難しい場合があります。

治療の必要性

 精巣が挙上していると、陰嚢内にある場合と比較して2~3度高い温度環境にさらされています。精巣が高い温度環境にあると精子の機能が落ちると考えられており、精巣を本来の位置である陰嚢まで引き降ろしてあげる必要があります。生後6ヶ月ごろまでは陰嚢へと降りていく事が期待できますが、それ以降はほとんど下降しない事がわかっており、1歳前後に、遅くとも1歳半までには手術を行うことが推奨されています。ただし、この手術によって精巣の機能が保証される訳ではありません。

 遊走精巣では、精巣が挙上している時もありますが、リラックスしている時には陰嚢まで降りています。そのため、温度の影響はそれほど大きくないと考えられており、手術を行わずに経過観察することが可能です。ただ、お子さんによっては何かのきっかけで上りっぱなしになることがあり、その時は手術を行う必要があります。

手術について

 全身麻酔で手術を行います。精巣の位置によりますが、足の付け根(約2cm)、陰嚢(約1cm)の傷をつけ、精巣を引き下ろして陰嚢に縫って固定します。精巣がお腹の中にある場合やどこにあるかわからないような場合には、腹腔鏡でお腹の中を観察します。お腹の中に精巣がある場合は、手術を2回に分けて行うことがあります。

 遊走精巣の手術では、精巣の位置によっては陰嚢の傷のみで手術が可能な場合があります。

当院での治療の流れ

 当院では1泊2日が基本となっています。手術の前日に入院していただき、体調に問題がないか確認し、手術に備えます。この日に麻酔科医師の診察と麻酔の説明があります。2日目の朝に手術を行います。術後、麻酔からしっかりと覚めたことが確認できた後、夕方に退院となります。1週間後に外来で傷の状態などを確認します。

 ただし、喘息や心臓の病気などを抱えているお子さんについては、手術翌日の朝まで経過観察のために入院していただきます。(2泊3日の入院になります)。

 また、入院日が休日・祝日の場合は、入院までに外来で麻酔科医師の診察と麻酔の説明を受けていただくようになっています。

 

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京都市立病院

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