肺の手術
全身麻酔の中で、心臓と肺の手術の麻酔は特殊です。肺の手術で麻酔法が特殊なのは、肺が手術野になるため、普通の方法で人工呼吸ができないからです。
良く行われる方法は、2本の細いチューブでできた分離肺換気用のチューブを使うことです。このチューブで、手術しない側の肺だけ人工呼吸するのです。(ほかに、手術する側の気管支を閉塞させるブロッカーを使う方法もありますが、原理はだいたい同じです。)
こうすれば、開胸手術も胸腔鏡を使った手術もずっとやりやすくなります。
ただし、この方法では、心臓から肺に行った血液の何割かは、人工呼吸されている肺に行かずに静脈血のまま心臓に戻ってくるのですから、呼吸の効率は大変悪くなります。
また、1本1本のチューブは細いので、痰や血液で閉塞したり、位置がずれて人工呼吸に問題が生じる危険性が、一般の手術にくらべて大きくなります。
このため、肺の手術の麻酔には、麻酔科専門医が細心の注意を払ってあたっています。