脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔の合併症・偶発症

頭痛

 脊椎(腰椎)麻酔は、専用の細い針で硬膜を穿刺し、クモ膜下腔に局所麻酔薬を注入します。手術後に脳脊髄液がこの時の針穴から漏れ、脳圧が下降し、そのために激しい頭痛が生じることがあります。

 若年者に太い穿刺針を使用した場合に多く、頭の位置を高くすること、脱水などで生じやすくなります。その発生頻度は低くはなく、5%程度とした報告もあります。経過は、特別な治療をしなくても、1週間程度で軽快します。

 予防策は、医師側としては細い腰麻針を用いること、患者さんの側では、なるべく安静を保つこと、水分を十分に摂取することなどです。

 治療法としては、腰椎の同じ部位で硬膜外腔まで針を進め、本人の血液を注入し、凝血により穴を塞ぐ『ブラッドパッチ』といわれる方法がもっとも有効ですが、通常の鎮痛薬、輸液などで十分なことも多いようです。

 硬膜外麻酔でも、硬膜を傷つければ同様のことはおこります。

馬尾症候群

 脊髄は、骨と軟骨をつないだ脊柱という筒で保護されています。脊柱の長さは、胎生期は脊髄と変わりませんが、次第に脊髄より長くなります。その結果、脊髄は成人では腰椎上部より上しかなく、それより下の脊柱の中は、馬尾といわれ、神経が縦に走っているだけです。脊髄くも膜下麻酔とは、この馬尾の部分で脊柱の椎間を穿刺し、脊髄液の中に局所麻酔薬を入れるのです。ですから、通常このために脊髄が傷害されることはありません。

 しかし、 1万例に1~5例程度の発生頻度で、馬尾の損傷による神経障害を生じることがあります。症状は、腰髄下部以下の神経支配領域の知覚異常、運動障害、膀胱直腸障害などです。

一過性神経症状

 脊髄くも膜下麻酔の効果が切れて12~24時間たってから、臀部、下肢に放散痛などが生じることがありますが、通常2日から1週間程度で消失します。これが脊髄くも膜下麻酔のためなのか、手術体位のためなのかはわかっていません。

 硬膜外麻酔でも一過性神経症状が生じる可能性はあります。

硬膜外血腫 

 血液の凝固機能や血小板異常がある場合、硬膜外穿刺時やカテーテル抜去時に、硬膜外血腫を生じる危険性があります。
 凝固や血小板機能に異常のない人で硬膜外血腫が生じた例も報告されていますが、きわめて稀です。

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